AWS のリージョンをどこにするとよいか、速度・価格面から見ていきます。
最終更新
- 2021/03/02 大阪ローカルリージョンから通常リージョン昇格にあわせ、リージョンごとのサービス数をカウントしなおし → 結果:バージニア北部190、東京168、大阪53
目次
AWS のリージョンとは
AWS は世界中にデータセンタがあり、そこにはサーバやストレージが格納されています。 それぞれのデータセンタは「リージョン」という単位で分類されています。 たとえば一部ですが下記のようなリージョンがあります。
- ap-northeast-1 アジアパシフィック (東京)
- us-east-1 米国東部(バージニア北部)
- us-east-2 米国東部 (オハイオ)
- us-west-1 米国西部 (北カリフォルニア)
- us-west-2 米国西部 (オレゴン)
- eu-west-1 欧州 (アイルランド)
EC2・RDS などのインスタンスを作成する際、必ずリージョンを決めないといけません。 一旦決めたリージョンを変更することは、とても面倒 (コピーして新規作成になってしまう) ですので、 最初にしっかりと決めましょう。
注意点は下記です。
- リージョンによって料金が異なる
- リージョンによって対応サービスに違いがある
- リージョンによって安定性が異なる(?)
- 速度的には利用者に近いリージョンが望ましい
以下に詳しく述べます。
リージョンによって料金が異なる
「リージョンによって料金が異なる」について、具体的な料金を見てみましょう。 EC2 のインスタンスタイプ t2.micro の 1時間あたりの料金が下記です。 高い順に並べてあります (2018年12月調査)。
リージョン | t2.micro のコスト (USD/時間) | 最安との比率 |
sa-east-1 南米 (サンパウロ) | 0.0186 | 160% |
ap-northeast-1 アジアパシフィック (東京) | 0.0152 | 131% |
ap-southeast-1 アジアパシフィック (シンガポール) | 0.0146 | 126% |
ap-southeast-2 アジアパシフィック (シドニー) | 0.0146 | 126% |
ap-northeast-2 アジアパシフィック (ソウル) | 0.0144 | 124% |
us-west-1 米国西部 (北カリフォルニア) | 0.0138 | 119% |
eu-central-1 欧州 (フランクフルト) | 0.0134 | 116% |
eu-west-2 欧州 (ロンドン) | 0.0132 | 114% |
eu-west-3 EU (パリ) | 0.0132 | 114% |
ca-central-1 カナダ (中部) | 0.0128 | 110% |
eu-west-1 欧州 (アイルランド) | 0.0126 | 109% |
ap-south-1 アジアパシフィック (ムンバイ) | 0.0124 | 107% |
us-east-1 米国東部(バージニア北部) | 0.0116 | 100% |
us-east-2 米国東部 (オハイオ) | 0.0116 | 100% |
us-west-2 米国西部 (オレゴン) | 0.0116 | 100% |
最安はアメリカの 3つ (バージニア北部・オハイオ・オレゴン) で、東京はそれより 31% も高いですね。
リージョンによって対応サービスに違いがある
リージョンによって対応サービスに違いがある、について。 AWS のドキュメント 製品およびサービス一覧(リージョン別) に一覧表があります。 2021/03 時点で、各リージョンの対応サービスの数を調べたものが下記です。
対応サービス数が多い順に並べています。AWS では「us-east-1 米国東部(バージニア北部) 」が最も多いです。これは AWS 初期からの傾向で、AWS で新サービスがリリースされるときは ほとんどの場合でこのリージョンが対象となるようです。
東京リージョンは上位で頑張っているほうですが、大阪リージョンの圧倒的少なさは残念。今後に期待しましょう。
リージョン | 対応サービス数 |
---|---|
us-east-1 米国東部(バージニア北部) | 190 |
us-west-2 米国西部 (オレゴン) | 185 |
eu-west-1 欧州 (アイルランド) | 181 |
ap-southeast-2 アジアパシフィック (シドニー) | 169 |
ap-northeast-1 アジアパシフィック (東京) | 168 |
eu-central-1 欧州 (フランクフルト) | 164 |
ap-southeast-1 アジアパシフィック (シンガポール) | 160 |
us-east-2 米国東部 (オハイオ) | 159 |
eu-west-2 欧州 (ロンドン) | 150 |
ap-northeast-2 アジアパシフィック (ソウル) | 148 |
ap-south-1 アジアパシフィック (ムンバイ) | 139 |
us-west-1 米国西部 (北カリフォルニア) | 133 |
ca-central-1 カナダ (中部) | 135 |
sa-east-1 南米 (サンパウロ) | 125 |
eu-west-3 EU (パリ) | 125 |
ap-northeast-3 アジアパシフィック (大阪) | 53 |
リージョンによって安定性が異なる(?)
AWS でいままで起きた大規模障害を振り返る を見る限りでは、us-east-1 米国東部(バージニア北部)の障害率が非常に高いように見えます。ただしざっと眺めただけで定量的な分析は行っていません。ぱっと見の感想です。
ただ、下記のようにも思います。
- 新サービスはまずは us-east-1 バージニア北部で、という傾向があるならば、
- 新機能リリースやバグ修正もばまずは us-east-1 バージニア北部 からということがあってもおかしくはない
速度的には利用者と同じリージョンが望ましい
日本人向けサービスであれば、レスポンス速度だけを考えると東京リージョンを利用するのが一番よいでしょう。 下記は EC2 リージョン間のレスポンスタイムを計測しているサイトです。
表示されているのは直近 24時間の平均レスポンスタイムですが、 マウスオーバーすると直近 1週間の平均レスポンスタイムが表示されます。 2018/12/01 に上記サイトより転記した情報は下記です。 なお、「ap-northeast-1 東京」から「ap-northeast-1 東京」への計測 (同一リージョン内での計測) は上記サイトでは行っていないようなので「不明」としましたが、 あなたがお使いの環境から東京リージョンまでおそらく 20ms 程度はかかると思います。
リージョン | ap-northeast-1 東京 からのレスポンスタイム |
---|---|
ap-northeast-1 アジアパシフィック (東京) | 不明 |
ap-northeast-2 アジアパシフィック (ソウル) | 39.32 ms |
ap-southeast-1 アジアパシフィック (シンガポール) | 75.03 ms |
us-west-2 米国西部 (オレゴン) | 102.77 ms |
us-west-1 米国西部 (北カリフォルニア) | 120.59 ms |
ap-south-1 アジアパシフィック (ムンバイ) | 134.83 ms |
ap-southeast-2 アジアパシフィック (シドニー) | 136.44 ms |
us-east-2 米国東部 (オハイオ) | 155.33 ms |
us-east-1 米国東部(バージニア北部) | 160.83 ms |
ca-central-1 カナダ (中部) | 161.98 ms |
eu-west-1 欧州 (アイルランド) | 233.19 ms |
eu-central-1 欧州 (フランクフルト) | 241.79 ms |
eu-west-2 欧州 (ロンドン) | 242.56 ms |
eu-west-3 EU (パリ) | 251.81 ms |
sa-east-1 南米 (サンパウロ) | 289.86 ms |
日本向けであれば東京リージョンを使うのが最もよいでしょう。 しかし料金が高い。であれば、代わりにどのリージョンがレスポンスタイムが小さいかというと、 米国になるのではと思います。
興味深いのは、us-east (東海岸) より us-west (西海岸) の方が明らかに速いこと。 おそらくは海底ケーブル経由で通信していると思うのですが、日本に近い西海岸の方が速いということですね。
まとめ
というわけで、主要リージョンについて以下にまとめました。
リージョン | 最安との比率 | サービス個数 | 安定性 | レスポンスタイム |
---|---|---|---|---|
ap-northeast-1 アジアパシフィック (東京) | 131% | 105個 | 普通(たぶん) | – |
us-east-1 米国東部(バージニア北部) | 100% | 129個 | 落ちやすい(?) | 160.83ms |
us-east-2 米国東部 (オハイオ) | 100% | 101個 | 普通(たぶん) | 155.33ms |
us-west-2 米国西部 (オレゴン) | 100% | 125個 | 普通(たぶん) | 102.77ms |
当ページ管理人の私見としては下記です。
- 料金が高くてもよい、レスポンスタイム重視なら東京。
- 料金が安くて、対応サービス数が多いほうがよい代わり、レスポンスタイムが少々大きくてもよくて、落ちやすくてもよい (?) なら、 バージニア北部。
- 料金が安くて、対応サービス数がバージニア北部の次に多くて、レスポンスタイムが若干よいものを使いたいなら、オレゴン。
今回のチュートリアルでオハイオを使っているのは「デフォルトだったから」というだけの理由でした。 本ページにあるような情報を先に知っていれば、オレゴンにしたと思います。
ちなみに
- 2017年5月17日以降に AWS アカウントにサインアップした場合、AWS マネジメントコンソール からリソースにアクセスするときのデフォルトリージョンは 米国東部 (オハイオ) (us-east-2)
- この日付より前のアカウントの場合、デフォルトリージョンは 米国西部 (オレゴン) (us-west-2) または 米国東部(バージニア北部) (us-east-1)
だそうです (AWS リージョンを選択する より)。